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組織づくり

MVVが現場で使われない理由と、浸透させる進め方

Be編集部

時間をかけてMVVをつくったのに、現場ではほとんど話題にならない。ポスターは貼ってあるけれど、仕事の判断に使われている気がしない。MVVが使われない理由と、日々の仕事の中に使う場面をつくって浸透させる進め方を整理します。

時間をかけてMVVをつくり、全社に発表した。社内のポスターにも、採用ページにも載っている。それなのに、半年たってみると、会議でMVVの言葉が出てくることはほとんどない。こうした状態は、多くの会社で起きています。

MVVが使われないのは、言葉が悪いからとは限りません。多くの場合、言葉を使う場面が日々の仕事の中に用意されていないことが原因です。この記事では、MVVが現場で使われない理由を整理したうえで、日々の判断・対話・評価の中にMVVを使う場面をつくる進め方を紹介します。MVVそのものの意味はMVVとは?ミッション・ビジョン・バリューの違いと役割で、つくり方はMVVの作り方。社員が自分の言葉で話せる理念の設計で紹介しています。

浸透しているとは、どんな状態か

浸透という言葉はあいまいなので、まず目指す状態をはっきりさせておきます。MVVを暗記していることや、唱和できることは、浸透とは言えません。目指したいのは、次のような状態です。

  • 迷ったときに、MVVを手がかりに判断している
  • 会議や1on1の中で、MVVの言葉が自然に出てくる
  • 自分の仕事とMVVがどうつながっているかを、自分の言葉で説明できる
  • MVVに沿った行動が、周りから気づかれ、認められている

つまり、知っている段階から、使っている段階へ進むことが浸透です。知ってもらうための発信と、使ってもらうための仕組みは、別のものとして考える必要があります。

MVVが現場で使われない理由

発表して終わりになっている

MVVをつくる過程には時間も熱量もかかるので、発表した時点で一区切りついた気持ちになりがちです。けれど、社員の多くにとっては、発表の日が初めてMVVに触れる日です。つくった側にとってのゴールは、使う側にとってのスタートにすぎません。

言葉と仕事のつながりが見えない

「挑戦を楽しむ」「お客さまに誠実に」といった言葉は、どれも正しく聞こえます。けれど、経理の人、営業の人、開発の人が、自分の明日の仕事で何をすればよいかは、言葉だけでは分かりません。つながりが見えないと、MVVは自分に関係のないきれいな言葉になってしまいます。

実際の判断がMVVと食い違っている

いちばん浸透を妨げるのは、会社の実際の判断がMVVと食い違っている状態です。たとえば「長く付き合える関係を大事にする」と掲げながら、目先の売上を優先する判断が続けば、社員は言葉よりも判断のほうを信じます。MVVは、掲げた言葉より、実際の判断で伝わります。

評価や仕組みとつながっていない

MVVに沿った行動をとっても、評価にも、ほめられることにもつながらないなら、続ける理由がありません。反対に、評価の基準がMVVと別の方向を向いていれば、社員は評価のほうに合わせます。

浸透させる進め方

浸透は、一度の施策で起きるものではありません。日々の仕事の中に、MVVを使う場面をいくつも置いていくことで、少しずつ進みます。ここでは、判断・対話・評価の3つの場面に分けて紹介します。

1. 判断の場面で使う

最初に手をつけたいのは、経営陣やリーダーの判断です。大事な判断をしたときに、その理由をMVVの言葉で説明するようにします。「この案を選んだのは、私たちが大事にしている〇〇に合っているからです」と添えるだけで、MVVが判断の基準として実際に使われていることが伝わります。

あわせて、MVVを理由に何かを断った例も伝えると効果があります。何を選んだかより、何を選ばなかったかのほうが、その会社が大事にしているものをはっきり示すからです。

2. 対話の場面で使う

MVVを自分の言葉にするには、話す場が必要です。おすすめは、少人数で次のような問いについて話す時間をつくることです。

  • 最近の自分の仕事で、このバリューに近い行動はどれだったか
  • このバリューを守るのが難しいのは、どんな場面か
  • このバリューに沿うなら、いまのチームの進め方で変えたほうがよいことは何か
  • 周りの人の行動で、このバリューらしいと感じたものは何か

大事なのは、正しい解釈を教える場にしないことです。人によって受け取り方が違うことが分かるのも、対話の大切な成果です。そのうえで、チームとしての具体的な行動に置き換えていきます。たとえば「お客さまに誠実に」というバリューを、営業チームは「できないことは、その場でできないと伝える」、開発チームは「見つけた不具合は、小さくても先に共有する」と置き換える、といった形です。

1on1や週の定例の中に、こうした問いを月に一度でも入れておくと、特別な研修を開かなくても対話の場が続きます。

3. 評価と認め合いの場面で使う

MVVに沿った行動が、周りから見え、認められる仕組みをつくります。評価の項目にバリューを入れる方法もありますが、いきなり評価に入れると、点数をつけるための言葉になりやすい面があります。まずは、日々の中でバリューらしい行動を見つけて伝え合うところから始めるのが進めやすい順番です。

たとえば、週の定例の最初に、バリューらしい行動を見かけた人が一人ずつ紹介する時間を数分とる方法があります。紹介された行動は、そのまま次の人のお手本になります。こうした具体例がたまってきたら、評価の項目に入れるときの説明にも使えます。

採用と受け入れでも使う

新しく入る人にとって、MVVは会社を知る入り口です。面接でバリューに関わる経験を聞く、入社したばかりの人に先輩がバリューらしいと思う自分の経験を話す、といった場面をつくっておくと、最初から使う言葉として受け取ってもらえます。

場面の例:人の少ないチームで始める場合

たとえば、社員が20人ほどの会社で、MVVを発表してから半年がたったとします。全員が集まる場は月に一度の全体会議だけで、日々の仕事はチームごとに進んでいます。

この場合、いきなり評価の仕組みを変えるより、まず全体会議の冒頭の数分を使うのが始めやすい方法です。代表がこの1か月の大事な判断を一つ選び、どのバリューを手がかりに決めたかを話します。続けて、各チームのリーダーが、チームの中で見かけたバリューらしい行動を一つずつ紹介します。

これを数か月続けると、紹介される行動の例がたまり、チームの中でも「それはうちのバリューに合っているか」という会話が出てきやすくなります。ここまで来てから、1on1の問いや評価の項目へ広げていきます。小さな場面でも、毎回くり返されることが浸透の土台になります。

担当と進め方のテンプレート

浸透の取り組みは、誰かが担当しないと、忙しい時期に真っ先に止まります。進めるときは、次のような項目を決めておくと動きやすくなります。

  • 担当:取り組み全体を進める人。経営陣の一人が後ろ盾になる
  • 場面:判断・対話・評価のうち、どこから始めるか
  • 頻度:対話の時間や紹介の時間を、どの会議に、どのくらいの間隔で入れるか
  • 確かめ方:どうなっていたら進んだと言えるか。会議でMVVの言葉が出た回数、社員が自分の言葉で説明できるか、など
  • 見直しの時期:半年に一度など、やり方を見直す時期

確かめ方は、アンケートの点数だけに頼らないほうが実態に近づきます。数人に「最近、MVVを手がかりに判断した場面はありますか」と聞いてみると、使われている度合いがよく分かります。

よくある失敗

グッズや掲示だけで終わる

カードやポスターは、知ってもらうためには役に立ちます。けれど、それだけでは使う場面は増えません。発信と仕組みを、両方用意することが必要です。

経営陣が使っていない

社員に使ってほしいと言いながら、経営陣が自分の判断をMVVで説明していないと、取り組みは形だけになります。浸透は上から順に進むものだと考えて、まず経営陣が使うところを見せます。

一度に全部を変えようとする

判断・対話・評価のすべてを一度に変えようとすると、現場の負担が大きくなり、続きません。一つの場面から始めて、定着してから次へ広げるほうが、結果として早く進みます。

短い期間で結果を求める

浸透は、数か月で目に見える成果が出るものではありません。すぐに変化が見えないからといって取り組みをやめてしまうと、MVVはまた飾りに戻ります。年単位で続けるつもりで計画を立てます。

浸透は、企業文化を育てること

MVVを日々の判断や対話の中で使い続けると、それがやがて、その会社らしい考え方や行動の習慣になります。浸透の取り組みは、企業文化を育てることそのものだと言えます。言葉をつくるのは一度でも、使う場面をつくるのは毎日の仕事です。大きな施策から始める必要はありません。次の会議で、一つの判断の理由をMVVの言葉で話してみるところから始めてみてください。


おまかせPMは、社内に進める人がいないプロジェクトを、進める役割ごとお引き受けするサービスです。MVVの浸透の進め方から相談したいときは、どこから手をつけるかの整理から、ご相談ください。

MVVは、掲げた言葉より、実際の判断で伝わります。
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